カラスの巣立ち(広報第3号より)
2009.03.136月のある日の午後、境内墓地の松の木の上で、2羽のカラスがけたたましく鳴いていました。それだけなら良かったのですが、ちょうど子ども達が幼稚園が終わって帰る頃で、お迎えに来たお家の人と一緒に園庭を歩いていると、それに対して大きく鳴き、さらに威嚇するように上空を急旋回する様子を見て、これは尋常じゃないと私は思いました。
カラスが人を襲ったというニュースを以前に見聞きしていたこともあり、子ども達の安全を考え、傘をさして送迎の補助をしながら、しばらく様子を伺っていました。市役所にも電話して、対応策のアドバイスも求めました。完全にカラスに対して敵対心を燃やしていました。
しかしよく観察していると、カラスが人を襲うそぶりはなく、人がある地点を通ると鳴き声が高くなり、旋回するのでした。その地点の上の方、松の葉っぱが茂っている部分に目をこらして見ると、子どものカラスがちょうど羽ばたこうとしているところでした。
おそらくそこに巣があるのでしょう。子どもが巣立ちの時を迎え、カラスの両親が少し離れた所から心配して見守っているのでした。子ガラスは両親の姿を探しても見つからず、途方にくれてか細く鳴いていましたが、しばらくして意を決して巣から飛び上がりました。しかし大空に飛んでいくかと思ったのもつかの間、羽ばたき慣れていない体は、すぐ近くの木の枝へしがみつくしかありませんでした。
枝から枝へと少しずつ飛んで移動する姿は非常におぼつかなく、その様子を見て二匹の親ガラスも場所を変えながら、しかし決して子どもから見つからない距離を保ちながら、移動するのでした。人間が近くを通ると警戒して甲高く鳴くので、その声は当然子ガラスにも届いているのでしょう。でも、決して子どものそばには行かずに、見守るだけでした。ようやく仮飛行を繰り返し体が温まった(?)子ガラスが、勢い良く空へ無事に飛び立つのを見届けると、親ガラスも安心して去っていきました。
さきほどまでの敵対心は、すっかり私の中から消えていました。人間の立場から見ると、何事か災いをもたらすイメージで見てしまうカラスですが、子を想う親の気持ちはどの世界でも変わらないということを実感し、むしろ、自立を早い段階で促す親ガラスの姿勢に感心してしまいました。これが自然の摂理というものなのでしょうか。
この春幼稚園を巣立つ子ども達は、今後もまだまだ保護者のサポートが必要なことでしょう。そばによって手助けしてしまうことも多いことでしょう。しかし遅かれ早かれ、徐々に見守ってやるだけ(放任とは違う)の存在になっていくことが、自然の摂理にかなう人間の本来の姿なのかもしれません。
卒園おめでとうございます。
おくりびと
2009.02.23映画の「おくりびと」、アカデミー賞を獲得しましたね。私も本当に嬉しかったです。庄内の景色がふんだんに出てきますが、特に地元若草幼稚園界隈の日吉町、ここもいい場面で出てきます。実際、園児と歩いて日和山公園まで散歩に行った時に、直前までその付近で撮影していたという時もありました(生の本木と広末見たかった…)。
今は大分さびれてしまった感のある日吉町があれだけ出てくる映画は、今後二度とないと思いますが、それがアカデミー賞だなんてすごいですね。映画の舞台になった小幡さんや港座は、映画を見て訪れる人が多いのですが、これからまた増えるでしょう。映画館だった港座を復活させようという動きがありますが、それに弾みがつくといいですね。
私も仕事柄、あの映画のように死の場面に立ち会うことが多いのですが、いつもお経を読む前に、亡くなった方の顔にかけてある白い布巾を取って合掌します。そして毎回思うのですが、布を取った瞬間、安らかな顔にいつも出会うのです。亡くなり方は人それぞれで、もしかして亡くなる瞬間は苦悶の表情を浮かべていたかもしれませんが、いざ彼岸に旅立つ時、人は何かが抜け出たように、ホッとしたような顔を見せてくれるのです。今までたくさんの方々の枕経をさせていただきましたが、皆さん肉体を残して魂が旅立った後の、(もしかして抜け殻かもしれないけど)、いわゆる安心の表情でした。みんな本来の世界に帰っていくのです。
しかしそれは、素の表情ではあるのですが、納棺師のプロの仕事としての、けれども心情として亡くなった方のため、そして何よりも遺族の方々のための努力が大きかったということに、今さらながら気付きました。あの映画を見るまでは、納棺師の仕事を当たり前のように思っていた自分がいましたが、私よりもずっと、遺族の方々の感情があふれ出てくるのを、彼らは真摯に受け止めているのですね。冷たく固くなっていく肌に、きれいに化粧が施され潤いが出てくる、そして今もしっかりと息づいているような故人を前にして、遺族の心はようやく癒されるのです。
すべての人が経験する普遍的なテーマである死を通して、夫婦の絆、わが子への無償の愛、父、母に対する想いという家族愛のすべてが、自然に綿々と紡ぎだされてくるような映画でした。
本場アメリカでのアカデミー賞は、一つの競争の結果にすぎませんが、愛する人の死に対する思いは万国共通であるという証であり、だからこそどのように生を送るのが大切かということを、世界の人は常に命題を持って生きているのかなと思います。
英語でのタイトル名は、「Departure(デパーチャー)」(旅立ち)でした。『死とは、門である』。この物語の中にはそんなセリフが出てきます。「死」とは、終わりではなく、旅に向かうための通過点、つまり「新たな旅立ちの門出」なのでしょう。『まだ、あっちで会おの~』、庄内弁のお別れが身にしみました。
素晴らしい映画に出会えて本当に嬉しいです。アカデミー賞おめでとうございます。
畏敬の念
2009.02.05今年も2月3日の節分に、森の山から鬼がやってきました。若草の豆まきは、鬼が怖いということで評判(!?)なのですが、今回は史上最多の7頭(匹?人?)、そして初めて、女性の鬼(通称「鬼嫁」)が登場しました。
いつも腕白で強がり言う子ほど、鬼には弱く、泣いてしまうのですねえ。今回も我々鬼達がホールに現れたとたん、最初は豆を投げつけて頑張っていた子ども達も、もう逃げまどうばかりでした。
でも、目に涙をいっぱいためて逃げる子ども達を見てかわいそうになり、ちょっと手加減すると、パンチやキックが飛んでくる場合もあります。特に年長の男の子は、テレビのヒーローになりきってポーズを決めてかかってきますので、こちらもそれに合わせて倒れたりします。勇気を出して鬼と戦ったという気持ちが自信になり、退治したという誇りで大満足の様子。またそこで生き返ると、びっくりして逃げるのですが・・・。
鬼と向き合うことで自分の弱さを思い知らされ、そこにとどまるか乗り越えるかの選択を強いられる、そんな過程を子どもの中に見る思いがします。
鬼のように有無を言わさない怖い存在、昔はお父さんであり、近所の頑固爺さんだったり、学校の先生だったりしたと思いますが、最近ではそういう存在がなくなったのかなと思います。私自身もそうですが。
ちょっと話は飛躍しますが、オーストリアの哲学者で教育学者であったルドルフ・シュタイナーは、子どもの時代に、「畏敬の念」を持つことが大切だと言っています。「その対象に対して、内的には近づきたい、一体化したいと切望しつつ、外的には畏れおののいて、一定の距離を保つ」存在が子どもには必要だと言っているのです。
自分には到底届かない存在、姿、あるいは現象に触れた時、人間は「畏敬の念」を感じ、自分の心の内に深い感動を呼び起こし、そしてその存在に対して少しでも近づきたいという強い気持ちがこみ上げ、そこに人間の無限の可能性を実感し、実践していく力になっていくのではないでしょうか。
もちろん鬼に対しては、畏敬の念というよりも恐怖感が先にくるのですが、鬼の持つはかりしれないパワーと絶対的な存在感に子ども達が触れることで、自らの弱気の虫をやっつけるきっかけになってくれれば、若草の鬼達も本望と言えるでしょう。
今年も早朝雪だるまをやるか!?
2008.12.16先日はぴょんぴょん広場に参加いただきありがとうございました。
最近はぐっと寒さが増してきて、いよいよ冬が到来したなという感じがします。
雪がいっぱい降れば大人は憂鬱になりますが、子ども達は大喜び。雪遊びにせっせと励むことになります。
昨年度はそれを逆手にとり、大人も童心に帰ろうということで、お父さん達を集めて早朝カマクラ、ジャンボ雪だるま作りを行いました。平日の朝5時に集合、まだ空は真っ黒で誰のお父さんが来たかよく分からない中、黙々とグランドに雪を集め、大きいカマクラや雪だるまを作りました。日が昇り、ようやくお互いの顔が判別できた頃に完成、そこには充実感いっぱいの笑顔が広がっていました。
その日登園してきた子ども達はびっくり仰天。嬉々として遊ぶ姿が印象的でした。
今年もいっぱい雪が降れば、またやろうかなと思っています。幼少の頃に自らが夢中になっていた遊びを再体験し、また、それが結果的に子ども達に喜んでもらうことになれば、元気がないと言われる大人達の「生きる力」にもなっていくのではないかと思います。(ちょっと大げさか?)
野菜ソムリエ
2008.12.05先日のぴょんぴょん広場に参加していただきありがとうございました。サンタクロースをやらせていただきましたが、坊さんの格好から一旦私服に着替えて、あの赤い衣装を付けながら、「俺っていったい何?」とふと思いました。まあ子ども達が喜んでくれれば、何でもありということで・・・。
ところで皆さん、野菜ソムリエって聞いたことありますか? 王監督の娘さんの理恵さんやタレントの長谷川理恵さんなどがその資格を持っていることで知られていますが、正確には、ベジタブル&フルーツマイスターと言います。ソムリエと言うと、ワインを口に含みながら難しい顔をして味や銘柄を判断する印象がありますが、そんな敷居の高いものではありません。ベジフルマイスター協会のHPからその定義を抜粋すると、「野菜と果物の魅力を様々な形でわかりやすく伝え、生活の中で、野菜と果物をもっと美味しく、もっと楽しんでもらい、豊かな食シーンの実現に貢献する。それがベジタブル&フルーツマイスターの役割です」。
実は私も、野菜ソムリエの資格をこの春取得しました。と言っても、第1段階であるジュニアマイスターの資格であり、1回2時間の講座を7回受け(通信教育でもよし)、クッキングレシピなどの課題をこなし、試験に受かれば比較的簡単に取ることができます。講座では、青果物から得られる新しい発見に感動する力、そしてその感動を表現する力を学んだり、青果物の品種、作型、栽培方法、鮮度、生産から流通までの知識を身につけ、時には食べ比べを実施し、青果物のカルテを作成し、様々な条件による味の違いを見極める力を学びます。講座には、主婦の方や料理好きの女性、スーパーの経営者、青果市場の関係者、居酒屋の料理人の方々など、様々な分野から参加していました(7割が女性でした)。
私は、幼稚園の子ども達とのすくすく畑での体験から、野菜の有機無農薬栽培にとても興味を持つようになり、それがきっかけでこの資格を取得したいと思うようになりました。もう一つ上の段階であるマイスターを取得するには、さらなる講義の時間や勉強の必要がありいつ取れるか分かりませんが、将来きっと取得して、野菜作り、そして子ども達への食育を充実させたいと思います。
皆さんの中でもし興味を持たれた方がいれば、情報を教えることもできるので、気軽にお尋ね下さい。
王理恵さんがテレビのCMで付けていたエプロン、試験に受かったので購入することもできるのですが、あれを付けるのはちょっと恥ずかしいです。
秋まつり御礼(11/1)
2008.11.01 先日は秋まつりにお越しいただきありがとうございました。
私はお寺の仕事が重なり、参加できず残念でした。最近はどうしてもお寺の用事が優先して、幼稚園に行って子ども達と遊ぶ機会が減っています。私にとっては、子ども達からパワーをもらわないと気力が衰えてしまう気がするので、少し寂しいです。
でも、檀家さんであるお年寄りの方々と接するのも、一方で大事な機会です。世事から離れ、日常を達観して過ごしている方々とお話するのは、とても興味深いし気持ちが落ち着きます。
「今日は穏やかな日ですのぉ~」という会話だけで心がほのぼのしてくるのは、その方が、日々のつつがない暮らし、自然の環境に感謝して過ごしているのが実感できるからだと思います。理想や刺激を求めてしまう若者と違い、ありのままの日常をありのままに受け入れることができる、それが、自然の摂理の一部である人間の本来の姿なのだと思います。
とは言っても、皆さんのお子さんはまだ世の中に飛び出してきたばかり。目の前の出来事に一喜一憂して成長していくのが務め。原体験を積み重ね、感動を様々な場面から得ていく過程を繰り返していくことが、幼児期にとって最も大切なことです。それが将来、「穏やかな日ですのぉ~」としみじみと心から思える境地につながっていくのでしょう。
若草幼稚園が、そのような子どもの成長過程の一端を担っていけるように、今後とも努力し続けたいと思います。よろしくお願いいたします。
ぴょんぴょん広場(運動会、10/1)
2008.10.01昨日はぴょんぴょん広場に参加いただきありがとうございました。私も皆さんと一緒に楽しく運動会に参加できました。
昨日の会の終了後にもお話したのですが、現在保護者のお父さん達と一緒にチーム若草幼稚園を結成し、メタボ解消、健康増進に取り組んでいます。
具体的な活動としては、6月に行われたトライアスロンのおしんレース(スイム、バイク、ラン)のリレー部門にチームを組んで出場し(5チーム15人)、見事完走しました。今度の10月5日に行われるデュアスロン大会にも29名(お母さん1名)が出場します。全く運動経験のなかったお父さんもいますが、マイペースでコツコツ練習し、大会に備えています。
自分の運動不足の解消になるのはもちろんですが、我が子に、お父さんが頑張っている姿を見せたい、カッコいいところを見せてやりたいという思いも強いようです。その姿勢は、子育てにきっといい影響を与えるのではないかと思います。まさに、「大人が輝けば子どもも輝く」です。(このフレーズに関しては、幼稚園のホームページの「園長のつぶやき」に詳しく載せていますので是非ご覧ください)
私も40代中盤にさしかかりましたが、保護者と一緒に切磋琢磨しながら体を鍛えることで、園児と遊ぶ体力をさらにUPさせることができているのかなと思います。
皆さんの中で、お子さんの入園を当園に考えていただく方がいらっしゃれば、是非お父さん(お母さん)からも、このような活動にもご参加いただければと思います。(汗をかいた後のビールがうまい! この理由だけで走っているお父さん達もたくさんいます)
ぴょんぴょん広場(ミニピクニック、9/3)
2008.09.03 バスに乗ってのミニピクニック、いかがでしたか?
皆さんが行った万里の松原、アスレチックが充実していたりウォーキング(ジョギング)のコースがあったりで、自然の中で体を動かしたい人には絶好の環境ですね。
かくいう私もジョギングが趣味なので、早朝や夕方、時々走りに訪れます。一周2キロちょっとのコースを何周かゆっくり走りながら、森林浴を楽しんでます。
走っているといろいろな人に出会います。手をしっかり振ってウォーキングする方、黙々とタイムを計りながらランニングをする方、犬の散歩をする方、部活で走る高校生、語り合いながら歩く御夫婦など、自分のペースでコースを廻っています。それぞれの目的は違いますが、皆さんに共通しているのは、樹木から発せられるエネルギーを全身に受け、それを活力にしているところでしょうか。
日頃車で動くことが当たり前になってしまい、なかなか歩いたり走ったりする機会がない人も多いと思います。たまにはお子さんと一緒に、この素晴らしい環境で体を動かし、自然と一体になりながら心地よい汗をかくのもいいかと思います。
最後に、私がいつも心に刻んでいる、創立からの若草幼稚園のスローガンを紹介します。
「豊かな緑の木々にかこまれて、はしる、ぶつかる、なく、わらう。そして、あふれるほどの自然の光を!」
夏まつり御礼
2008.07.26 先日は暑い中、たくさんの方々からおいでいただきありがとうございました。
今回私の担当は泥んこプールだったのですが、利用したのは一組の兄妹だけでした。残念(TmT)ウゥゥ・・・。
この泥んこプール、夏休みに入る1週間ぐらい前にお父さん達で作りました。何と早朝5時から集まっていただき、みんなでせっせと作りました。さっそくその日年長組が利用して、体中泥んこだらけになり、みんなキャーキャー言いながら存分に遊びました。私も一緒になって泥だらけになり、日頃のストレス(?)を大いに発散することができました。しかし、その後夏休みに入ったので、このプールを利用したのはこの日一度だけ。夏限定のプールなので、もったいない・・・。
そこで、今回ちっちゃい子達にも入ってもらおうと準備しましたが、見事空振り。やはりちょっと刺激が強すぎたかな?来年は是非、みんなからも入ってもらいたいと思います。
終了後のすくすく畑ツアーにも大勢の親子から参加していただきありがとうございました。沢山あった夏野菜(トマト、キュウリ、ナス、ズッキーニ、パプリカ、トウモロコシ、人参、カボチャ、スイカ、ジャガイモ・・・etc)も、年長さんが夏季保育で収穫し尽した後なので、ミニトマトやピーマンぐらいしか提供できませんでしたが、皆さんから何とか収穫してもらいました。有機、無農薬栽培なので、新鮮で美味しいですよ!
これからまた、様々な楽しい行事がありますので、是非若草に来てくださいね。ホームページもできるだけ更新して情報をUPしていきます。よろしくお願いします。
大人が輝けば、子どもも輝く(広報わかくさ第1号)
2008.06.306月15日、「第23回トライアスロンおしんレース」が開催され、リレーの部に、若草幼稚園の保護者で組んだ5チーム(カメ、金魚、カエル、カブトムシ、ギンヤンマ)が出場しました。1人で3種目(スイム、バイク、ラン)行うフルタイプでなく、3人がそれぞれの種目を分担して、チームとして競うものです。全部で23チームがエントリーしました。
結果を先に言うと、カメチームが2年連続の優勝を成し遂げました。去年と同じく大学トライアスロン部の学生チームと優勝争いになり、「ウサギとカメ」の昔話のように大差がついて油断した若い学生ウサギチームを、中年親父ガメのたゆまない歩みにより、ランの終盤で逆転するという劇的な幕切れでした。
また、その他のチームもギンヤンマが6位、カブトムシが7位、カエルが20位と、初心者が多かったチームとしては本当に大健闘でした。ただ、金魚チームの順位はつきませんでした(個人記録のみ)。かなり水温が低かったことで、スイム担当のお父さんが足をけいれんし、リタイヤしためです。本来バイクが得意な彼ですが、手薄なスイム担当を私からお願いされ、未経験にも関わらず快く引き受けてくれたお父さんに、私自身申し訳ない気持ちでいっぱいでした。でも、彼はすぐ気を取り直して、今度はバイクで次回にリベンジしたいと決意を示してくれました。
今大会は、何といっても応援体制が充実していたことが特色でした。奥さん、子ども達、保護者仲間で結成した応援団、年長組担任、そして車椅子の武久さん夫妻と、若草ファミリーが団結して熱烈な応援を繰り広げてくれたことが、お父さん達のモチベーションを高め、最大限の力を発揮できた要因だったと思います。「『身近な人を一生懸命応援すること』が、こんなに嬉しいことだとは思わなかった」と、あるお母さんが言っていました。
「大人が輝けば、子どもも輝く」、武久さんから頂いた言葉です。おしんレースはどちらかと言うと、私の個人的趣味にお父さん達を引きずり込んだ形で、「大人が輝けば…」などとは考えませんでしたが、過酷な競技に挑戦し、苦しみながらもチームのために頑張り、また、応援も含めてみんなで楽しむという過程が、子ども達に少なからず影響を与えていくのは確かだと思います。無邪気な子ども達から元気なパワーをもらい、大人が味わう試練と楽しみを子ども達に返してやる、その相乗効果が両者の生きる力になっていくのではないでしょうか。
さらに、ゴール前で武久さんの車椅子を押しながら、メンバーみんなで一緒にゴールし盛り上がりましたが(武久さん曰く「なんちゃってゴール」)、これが後に、〝なんちゃって〟じゃない〝本気〟の他者への思いやりを育むことにつながっていくのではないかと思いました。
私はこのおしんレースに運営面から関わっていますが、老若男女を問わず多くの市民が手弁当で作り上げる素晴らしい大会です。大会当日は数百人のボランティアが、給水や計測、誘導、食事などのパートに分かれ、選手をサポートします。その温かいもてなしに感謝し、県外から毎年やってくる選手も多いです。観光資源は「人」であるこの酒田の地で、選手もボランティアも皆一体になって、『大人の輝き』を支えていくこの大会が私は大好きです。
来年もまた、やるぞ!