幼稚園の砂場
2010.10.04前回の「園長のつぶやき」の最後の方で、『幼稚園の砂場』について触れましたが、これは、ロバート・フルガムという人が書いた「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ(河出文庫) 」という本(エッセイ集)から引用したものです。彼は、そのエッセイの中でこのように述べています。
『人間、どう生きるか、どのようにふるまい、どんな気持ちで日々を送ればいいか。本当に知っていなくてはならないことをわたしは全部残らず幼稚園で教わった。人生の知恵は大学院という山のてっぺんにあるのではなく、幼稚園の砂場に埋まっていたのである。わたしはそこで何を学んだろうか。
・何でもみんなで分け合うこと
・ずるをしないこと
・人をぶたないこと
・使ったものはかならずもとのところに戻すこと
・ちらかしたら、自分で後片付けをすること
・人のものに手をださないこと
・誰かを傷つけたら、ごめんなさい、と言うこと
・食事の前には手を洗うこと
・トイレにいったらちゃんと水をながすこと
・焼きたてのクッキーと冷たいミルクは体にいい
・釣り合いのとれた生活をすること 毎日少し勉強し、少し考え、少し絵を描き、歌い、踊り、遊び、そして少し働くこと
・毎日少し昼寝をすること
・おもてに出るときは車に気をつけ、手をつないで、はなればなれにならないようにすること
・不思議だなと思う気持ちを大切にすること』
前回の「つぶやき」で、少年鑑別所の視察について書いたのですが、彼ら少年少女の退所時の感想文を見て、この本のことが頭に浮かびました。身体は大人と同じように大きくなっても、心は不安定で未熟な彼ら。しかし、鑑別所で短期間でも規則正しい生活を送るうちに、徐々に何かを理解していくのです。
それは、新たに学ぶということでなく、幼い頃、幼稚園(保育園)の砂場で遊ぶことで自然と会得していったことを、彼ら自身も思い出すことではないでしょうか。
“砂場”を比喩的に使ってますが、遊びの楽しさ、喜びを存分に感じると共に、遊びのルールを知り、友達との関わりにおいて発生する様々なトラブルを経験することで、人格は形成されていく。“人間、どう生きるか、どのようにふるまい、どんな気持ちで日々を送ればいいか”を、幼児期にすでに学んでいて、いくら年をとっても、後は原点であるそこに行きつく(戻る)。思春期になりすべてを否定してしまう少年、少女の心のどこかにも、砂場は残っていて、そこからやり直していくのです。
この本のタイトルほど、すべてを表している作品はないと思います。