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地獄の絵本

2012年07月13日

 皆さん「地獄」の絵本を見たことがありますか?1980年に発行されたロングセラーですが、年に2千冊売れればいい商品だったのですが、ここ数ヶ月で10万部近く売れ、なぜか爆発的な人気になっているそうです。若い保護者が買っていくケースが多いそうです。(参考―北陸中日新聞・4月18日朝刊)

 死ねば閻魔大王に裁かれ、悪いことをしていれば、地獄で鬼達に苦しめられる。そんなシンプルな内容ですが、挿入される絵が生々しく衝撃的なのです。絵本を発行する出版社の社長によると、「本を見ただけで泣く幼稚園児もいる。乱暴で癖のさる作品だが、これによって子どもに死の怖さや生命を大切にするという気持ちを育てたい」と説明しています。残画表現に対するクレームはなく、「子どもが地獄を怖がって、ウソをつかなくなった」「子どもが言うことを聞くようになった」等の声があるそうです。

 「地獄」の効用について、中村広光・別府大学幼児・児童教育研究センター長は、「悪いことをすれば、責め苦が待っていることを教えることは、昔からあることで悪いことではない。むごい絵によって、子どもが残虐な行為に向かうこともないだろう」と指摘します。ただ、「あまり小さなうちに見せれば、恐怖に過剰反応するようになる」と、現実と虚構の区別がつく4、5歳以降に見せるべきとアドバイスします。こんな意見もあります。「恐怖で善悪を教えるのは良くない。自分が地獄で苦しむので悪いことをしないというよりも、悪いことをされた側の痛みや悲しみを教えるべきだ」(碓井幸子准教授・清泉女子短大児童学)。もっともだと思います。

 実は、うちのお寺に、古くから伝わる地獄の掛軸(3つ)があり、8月23~25日の森の山まつりで展示しておりました。過去形なのは、一昨年の11月のお寺の火事で、その掛軸が燃えてしまったからです。檀家さんや幼稚園の関係者の方々に言われるのは、「あの地獄の掛軸が焼失したのは、本当に残念だね」と。皆さん、子どもの頃から毎年地獄の掛軸を見て、子ども心にいろいろ思い、考えてきた歴史があります。「あの掛軸で、絶対悪いことはしないと思った」と懐かしがる方がほとんどで、残酷な絵を展示するのはやめてほしいという意見は全くありませんでした。

 幼稚園で、地獄の絵本を読み聞かせすることはありませんが、毎年の夏の風物詩(?)として、地獄の掛軸を子ども達で眺め、私が説明していました。本当に地獄があるんだよということではなく、悪いことをすれば、自分の心の中でこの絵のように苦しんでしまうのだよというように話しています。子ども達なりに、それぞれ考えています。
 残念ながらあの掛軸は焼失してしまいましたが、今日本中の掛軸屋さん、骨董品屋さんをあたって、探しているところです。復活を望む声も本当に多いのです。ちょうど今、前の地獄図と似ているものを見つけました。もしかして8月の森の山まつりでは、新たな地獄図が展示されているかもしれません。

 皆さんのお子さんには、そんな地獄の絵本を無理に見せる必要もありませんが、なぜ今の時代に地獄の絵本がブームになっているのかということも、少し考えてみるのもいいかもしれませんね。

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