子どもと共に
(いがらしせんせい)
三学期に入り、年中組の子ども達は、興味や関心が広がり、友達とのかかわりを通して自分達で遊びを進めていく楽しさを味わっています。しかし、今日に至るまでは、子ども達も教師も年中組となった四月から、いろんなことを経験し、乗り越えてきました。
進級組ということで、年少組からのつながりがある子ども達の中には、「年中組になったんだ」という嬉しい気持ちと一緒に、「堀先生ってどんな人だろう」という気持ちもあったのではないかと思います。その気持ちを受け、一人一人とのかかわりを大事にしていこう、教師も一緒に体を動かし、いっぱいかかわっていこう、それらを通して互いに理解できたら、という思いを持って接してきました。
進級当初Aくんは、いつも服の袖口をかじっていました。部屋も担任も変わったことでの不安な気持ちが伝わってきます。どうにかAくんの気持ちを柔らげたい、という思いでかかわってきましたが、Aくんの変化が目にみえないことで、自分自身の中に焦りがでてきました。どうしたら心が通じ合えるのか、Aくんが興味を持っているのは何だろう、そう考えているうちに思いついたのが、紙飛行機とばしでした。Aくんが年少時代よくやっていた遊びの一つです。「先生と飛行機とばしの競争しよ」と誘うと、今まで固くなっていたAくんの表情が柔らかくなりました。飛行機とばしは、毎日続けるように心がけました。.ちょっとした時間を使い、Aくんにとばし方を聞いたり、ホールや廊下など、いろんな所に行ってとばしたり…。決して長い時間ではなかったのですが、Aくんとの間に、何か共通のものができたように思えました。それはAくんとの距離をぐっと近づけるきっかけとなりました。
Bちゃんは、自分の思いが強く、友達とよくケンカをします。進級当初、Bちゃんが何もしていないというCちゃんをたたいたことでケンカになりました。私はすぐに仲介に入り、「Cちゃん何もしていないんだって」と言うとBちゃんは、「堀先生なんて、大嫌い!」と大声を出して、職員室へ行ってしまいました。その言葉は、強く心に響きました。私は、Bちゃんとの今までのかかわりを反省しました。Bちゃんとは、ケンカの仲介の時だけのかかわりになっていたのです。それではいけないと思い、普段からのBちゃんとの触れ合いを大事にしていきました。Bちゃんと一対一での言葉のやりとりや、好きな遊びの鬼ごっこなどを通して、少しずつ信頼関係を作っていきました。
Aくん、Bちゃんのように、教師との信頼関係を少しずつ作っていく中で、子ども達は、友達関係を深めていくことができるのかもしれません。
DくんとEくんは、鬼ごっこやサッカー、ごっこ遊びなどを通していっぱいかかわっています。しかしその分、ケンカもよくあります。そのケンカのときなかなか互いの思いが伝わらずにいたので、何とか彼らの気持ちを伝えたいと思い、仲介をしてきました。どちらが良い悪いということよりも、それぞれの思いに気付いてほしい、そんな思いでかかわってきました。又時には、彼らのやりとりを見守ることもしてきました。ぶつかり合うことで、彼らは何か得ることができるのでは、という気持ちでいました。
ケンカをすることで相手の気持ちに気付いたり、友達の新たな面を知ったり、さらに二人の関係が深まったりと、今は目に見えなくても、きっと心の中に積み重なっていくのではないかと思われます。それは、子ども達のケンカを通して、私自身学ぶことができたのです。
子ども達も教師も決して真っすぐではない道を進みながら、信頼関係を土台に、少しずつ歩いていけるのだと思います。子ども達は、友達との遊びを通して、教師は、子ども達とのかかわりを通して、いろんな経験を積み重ね、共に楽しんだり悩んだり考えたりしながら進んでいくのだと思います。
年中組として残り少ない日々を、子ども達と一緒にいっぱい遊んで、いろんなことに挑戦し、時々ケンカもして、共に育っていけたらと思います。