山形県 酒田の幼稚園『若草幼稚園』です。
園内の様子や入園のご案内の情報をご紹介します。

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若草リレーブログ

カラスの生

2017.07.04
 
今日は園長です。画像は5月下旬の頃です。本堂前で、カラスの子どもが瀕死の状態で倒れていました。D先生が見つけ、そっと段ボールに入れてやり、倉庫へ運びました。お腹が空いているだろうとご飯と水を準備しましたが、自力で食べることはできませんでした。そこでD先生が箸でご飯を口に運んでやると、パクパク食べるのでした。人間からは忌み嫌われてしまう存在のカラスですが、弱々しいながらも必死で口を動かし生への執着を見せる子ガラスの姿に、私もD先生も、元気になって再び羽ばたいてほしいと思いました。しかしその後のD先生の懸命な看病も実らず、残念ながら2日後に力尽きました。森の山で年長園児と一緒に埋葬し、供養しました。(ここには虫や鳥、うさぎや亀等、いろいろな動物が埋められています。)ほんの数日でしたが、D先生と子ガラスの間に心通い合った瞬間があったのは事実です。
 
私は、8年前の出来事を思い出しました。広報に掲載したものを紹介します。
 
『カラスの巣立ち』(平成21年3月13日)
「6月のある日の午後、境内墓地の松の木の上で、2羽のカラスがけたたましく鳴いていました。それだけなら良かったのですが、ちょうど子ども達が幼稚園が終わって帰る頃で、お迎えに来たお家の人と一緒に園庭を歩いていると、それに対して大きく鳴き、さらに威嚇するように上空を急旋回する様子を見て、私は「これは尋常じゃない」と思いました。
 
カラスが人を襲ったというニュースを以前に見聞きしていたこともあり、子ども達の安全を考え、傘をさして送迎の補助をしながら、しばらく様子を伺っていました。市役所にも電話して、対応策のアドバイスも求めました。完全にカラスに対して敵対心を燃やしていました。
 
 しかしよく観察していると、カラスが人を襲うそぶりはなく、人がある地点を通ると鳴き声が高くなり、旋回するのでした。その地点の上の方、松の葉っぱが茂っている部分に目をこらして見ると、子どものカラスがちょうど羽ばたこうとしているところでした。
 
おそらくそこに巣があるのでしょう。子どもが巣立ちの時を迎え、カラスの両親が少し離れた所から心配して見守っているのでした。子ガラスは両親の姿を探しても見つからず、途方にくれてか細く鳴いていましたが、しばらくして意を決して巣から飛び上がりました。しかし大空に飛んでいくかと思ったのもつかの間、羽ばたき慣れていない体は、すぐ近くの木の枝へしがみつくしかありませんでした。
 
枝から枝へと少しずつ飛んで移動する姿は非常におぼつかなく、その様子を見て2匹の親ガラスも場所を変えながら、しかし決して子どもから見つからない距離を保ちながら、移動するのでした。人間が近くを通ると警戒して甲高く鳴くので、その声は当然子ガラスにも届いているのでしょう。でも、決して子どものそばには行かずに、見守るだけでした。ようやく仮飛行を繰り返し体が温まった(?)子ガラスが、勢い良く空へ無事に飛び立つのを見届けると、親ガラスも安心して去っていきました。
 
さきほどまでの敵対心は、すっかり私の中から消えていました。人間の立場から見ると、何事か災いをもたらすイメージで見てしまうカラスですが、子を想う親の気持ちはどの世界でも変わらないということを実感し、むしろ、自立を早い段階で促す親ガラスの姿勢に感心してしまいました。これが自然の摂理というものなのでしょうか。
 この春幼稚園を巣立つ子ども達は、今後もまだまだ保護者のサポートが必要なことでしょう。そばによって手助けしてしまうことも多いことでしょう。しかし遅かれ早かれ、徐々に見守ってやるだけ(放任とは違う)の存在になっていくことが、自然の摂理にかなう人間の本来の姿なのかもしれませんね」

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